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2025.08.29
PROJECT
【おさかなプロジェクト】東京の海を知る・おさかなプロジェクト合同プログラム 「ラムサール条約登録湿地の人工干潟を訪ねる」を開催しました
2025年7月12日(土)、葛西海浜公園「西なぎさ」にて、小・中学生とその保護者に向けた体験型学習プログラム「ラムサール条約登録湿地の人工干潟を訪ねる」を開催しました。 葛西臨海水族園では、身近でありながらあまり知られていない「東京の海」をテーマに、フィールドを実際に歩いて生き物や環境を学ぶ体験プログラム「東京の海を知る」を継続して開催しています。今回は、新水族園のオープンに向けた「おさかなプロジェクト」との合同プログラムとして開催しました。当日は干潟にくらすさまざまな生き物たちの様子を観察し、体験で得た学びをもとに、こどもたちが「理想の干潟水槽」を描き、新水族園で見てみたい生き物について意見を出し合いました。 身近な東京の海にはたくさんの生き物がくらしている 潮の満ち引きによって水没と干出を繰り返す沿岸域の砂泥地を干潟といいます。葛西海浜公園には「西なぎさ」「東なぎさ」という2つの人工干潟があり、国際的に重要な湿地としてラムサール条約湿地に登録されています。干潟にはカニやエビ、貝、魚、水鳥など多種多様な生き物がくらしており、生態系を形作っています。今回プログラムを行った「西なぎさ」では、バーベキューや磯遊びなどのレクリエーションを楽しめる一方、「東なぎさ」は生き物の生息に重要な保護区として、人の立ち入りが制限されています。 フィールドワークを通じて干潟の生き物たちの様子を知り、東京湾の自然環境について体験的に学ぶことが、今回のプログラムの大きな目的のひとつになっています。集まった参加者の皆さんへプログラムの概要や注意事項の説明をした後、10人程度のグループに分かれて干潟の観察を行いました。 グループに分かれて干潟の生き物探しに出発! まず向かったのは、平らに広がる砂浜です。この日は潮の満ち引きの差が大きくなる大潮にあたり、プログラムの開催時は干潮に向かう時間帯でした。地面をよく見ると、たくさんの小さな穴があいています。指を入れて掘ってみると、砂の中でくらすコメツキガニが現れました。コメツキガニは泥や砂の中の小さな藻類などを食べる、干潟にくらす小型のカニです。はじめは苦戦していたこどもたちも、すぐにコツをつかんで上手にカニを捕まえています。オスとメスの違いや、ネジのように回転しながら砂の中に潜る様子などを観察し、こどもだけでなく保護者からも「すごい!」「面白い」との声があがっていました。 コメツキガニ こうしたカニの巣穴以外にも、例えば、砂の中の小さな藻類などを食べた後に残された“砂団子”、鳥のフンや足跡など、干潟のそこかしこには生き物の痕跡があります。砂団子を見つけたこどもたちは「干潟にはカニのごはんがたくさんあるんだね」と、口々に話し合っていました。 地面に残された砂団子 場所が違うと生き物のくらし方も変わる 次に沖の方の泥地に移動すると、ここにも地面の上を歩くカニの姿が見えます。これは、柔らかい泥の中に巣穴を掘ってくらすヤマトオサガニです。先ほどのコメツキガニとは体の形も異なり、水の中からでも周りを見渡せる長い目(眼柄)を持っています。これにより周りをよく見渡せるため、鳥などの外敵の存在により早く気づくことができるのです。また、巣穴もコメツキガニのものより大きく、斜め下に伸びているのが特徴です。「コメツキガニのようにまっすぐ下に巣穴を掘ると、泥で埋まってしまうからかもしれないですね」という水族園職員の説明に、参加者の皆さんも「同じカニのなかまでも場所によってくらし方が違うんだ」と驚いた様子でした。 ヤマトオサガニ さらに、岩場の石をひっくり返してみると、また違った種類のカニ、タカノケフサイソガニがいます。こどもたちは「今度のカニは目が小さくて横に出てる」「岩の隙間にいるのに目が長かったら邪魔だから?」など、カニの体をじっくり観察。砂、泥、岩場と、それぞれの環境にぴったりの形をした生き物がくらしていることを実感していました。 タカノケフサイソガニ その後は、潮が引いた後にできる水たまり「潮だまり」にいる生き物を網で捕まえ、多くの魚やエビ、貝などを見つけると、参加者からは大きな歓声があがっていました。 シラタエビ 葛西海浜公園が登録されている「ラムサール条約」ってなに? ラムサール条約とは、湿地の保全や賢明な利用を目的とした国際条約で、正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。葛西海浜公園の干潟は、2018年に東京都で初めてラムサール条約湿地に登録されました。 実際に干潟を見渡すと、たくさんの鳥たちがエサを食べたり、羽を休めたりしています。遠浅の干潟には太陽の光がよく届き、潮の流れによって栄養分が運ばれるため、プランクトンや小さな藻類などが豊富です。それらをカニや魚などの生き物が食べ、さらにそれらの生き物を食べる水鳥などが集まってきます。また、干潟にくらすカキやアサリなどの二枚貝は、海のにごりの原因になるプランクトンなどを食べて、海水をきれいにしてくれる働きがあります。このように干潟は、多種多様な生き物のくらしと、豊かな自然環境を支えているのです。 「西なぎさ」から見える「東なぎさ」 新水族園で見てみたい「干潟の生き物」「理想の干潟水槽」をイメージ 干潟を歩いてさまざまな生き物を観察した後は、参加したこどもたちが思い描く「理想の干潟水槽」の絵を描いてもらいました。2028年にオープンする新水族園では、干潟の水槽の展示も予定されています。新水族園でどんな生き物を見てみたいか、イメージを膨らませていくこどもたち。「砂や泥の中でくらす生き物の様子がわかるガラスの水槽」「どんな方向からも見えるカニの水槽」「潮の満ち引きを再現できる水槽」など、たくさんの素敵なアイデアが生まれ、カニやヤドカリ、貝類などを新水族園で見たいという声が多く集まりました。 イベントの最後には、干潟のしくみをわかりやすく伝える紙芝居や、二枚貝による海水浄化実験も行いました。実際に干潟で生き物に触れた体験を通して、参加したこどもたちが東京の海への理解を深め、新水族園の完成を楽しみにしてくれている様子がうかがえました。 <参加した皆さんの声> 「カニがたくさんいて楽しかった。ほかにもエビやヤドカリがいてびっくりした」(小学校低学年のお子さん)「もともとカニが好きなんだけど、家の近くにはいないから、今日はいろいろな種類のカニを見つけることができて楽しかった」(小学校高学年のお子さん)「西なぎさには以前も来たことがありましたが、こんなに多くの生き物がいるとは知らなくて驚きました。干潟の特徴や、場所ごとの生き物の違いなどもよくわかって興味深かったです」(保護者の方) <水族園職員より> 「お子さんも大人の方も、実際に干潟を観察すると、新たな発見がたくさんあると思います。ぜひ、見て終わりにせず、今回の体験を通じて干潟以外の身近な自然や、東京の海のつながりにも目を向けていただけたらと思います。これをきっかけに、また海へ出かけ、体験を重ねてもらえたらうれしいです」 新水族園に向けた取り組み「おさかなプロジェクト」 新しい水族園のオープンに向けて推進している3つのプロジェクトのうちのひとつが、「おさかなプロジェクト」です。今回開催したプログラムのように、新しい水族園に展示する魚の一部をこどもたちと一緒に考えるなど、楽しみながら水族園や魚への理解を深めていただけるようなプログラムを今後も展開していきます。 ※3つのプロジェクトについては、東京都建設局ホームページ「葛西臨海水族園(仮称)整備等事業に関するよくある質問」をご覧ください。東京都建設局ホームページhttps://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/park/zoo/kasairinkaisuizokuen
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2025.06.25
PROJECT
【おさかなプロジェクト】
「ラムサール条約登録湿地の人工干潟を訪ねる」を開催します ※終了しました
「おさかなプロジェクト」の一環として、2025年7月12日(土)に「ラムサール条約登録湿地の人工干潟を訪ねる」プログラムを開催します。プログラムに参加するこども達に「理想の干潟水槽」の絵を描いてもらい、新水族園で見てみたい生き物について意見を集めて、新水族園で展示する生き物をこども達と一緒に考えます。
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2025.06.25
NEWS
新しい葛西臨海水族園に関するオープンハウスを開催します
※終了しました
葛西臨海水族園のリニューアルに向けて、令和10年(2028年)の開園を目指し、新しい水族園の姿を紹介するオープンハウスを開催します。実施設計後のイメージや取り組みを、パネルでご覧いただけます。
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2025.05.30
STORY
フィールドワークで自然を実感したことにより生まれた「行動変容」。その感覚や体験を来園者にも伝えたい
2028年のリニューアルオープンに向けて、現在着々と準備が進められている葛西臨海水族園。
この事業は、国内から水族館建設のプロフェッショナルを集めた事業者によって行われています。
「STORY」では、事業者である「株式会社東京シアトリエ(以下「シアトリエ」)」の取組について紹介していきます。
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2025.04.27
TALK
水族館に求められる教育の役割と、葛西臨海水族園が大切にしていること(後編)
水族館は教育機関であり、「地域連携共育」の重要性を説く高田さんと、水族館はなくてはならない存在、あると世の中や地球が少し良くなる存在でありたいと願う錦織さんに、「海」と「人」の共生を体現する水族館の在り方や「新たな水族園が描く未来」について語り合っていただきました。 前編はこちら 水族館の存在価値を高める「アクアポジティブ」の考え方 環境に配慮した素材を用いたオリジナルグッズ 水族館はこれまで「誰のものではなかったのか?」 東京にある水族館だからこそ、伝えられること 葛西臨海水族園内の「東京の海」エリア 前編はこちら 【プロフィール】 高田 浩二(たかだ こうじ) 1953年生まれ。海と博物館研究所所長。大分生態水族館(現マリーンパレス)入社。その後、マリンワールド海の中道に転職し、同館の設立に携わる。2004年から2015年まで同館の館長を務める。2005年に日本初の「水族館における海洋教育に関する研究」で博士号を取得。元福山大学生命工学部教授。好きな水族:カメ。カメグッズのコレクターで、オフィスはカメグッズであふれています!水族館に行くとここを見てしまう:展示ごとに何を伝えたいかを探しています。その水族館のメッセージを受け取りたい! 錦織 一臣(にしきおり かずおみ) 1968年生まれ。葛西臨海水族園園長。東京水産大学(現東京海洋大学)水産学部卒。福島大学大学院地域政策科学研究科修了。東京都職員として、伊豆大島や小笠原諸島の父島などの各地で勤務。その後、恩賜上野動物園、多摩動物公園などの勤務を経て現在に至る。好きな水族:イセエビ。1年近くの長い浮遊幼生期をへて稚エビになる生態が興味深い。水族館に行くとここを見てしまう:その時の気持ちの赴くままに…そして気になった水槽は時間をとってじっくり観察します!
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