記事一覧
2026.03.31
TALK
ミュージアムとしての葛西臨海水族園
水族館の新たな可能性
井上由佳さん(写真左) 端山聡子さん(写真右) 水族館と美術館は、展示内容は異なりますが、どちらも同じ「ミュージアム」の仲間です。ミュージアムは展示施設であると同時に、人々が楽しみ、学び、考え、つながる場として、その社会的役割は時代と共に大きくなってきているといえます。その中で、水族館はどのような学びを提供できるのでしょうか。 国内外の博物館の社会的・教育的役割を研究し、明治大学文学部で教壇に立つ井上由佳さん。東京国立近代美術館で教育普及室長を務め、多様な参加者のためのプログラムを開発・実践している端山聡子さん。お二人に、これからのミュージアムに求められる役割と、新しい葛西臨海水族園への期待を語っていただきました。 ミュージアムとしての水族館の魅力 ※身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念 これからのミュージアム運営に求められる来館者視点 対話を通じて「生産的な学び」を提供する 多角的なアプローチから生まれる、水族館の新たな可能性 井上 由佳 1976年東京都生まれ。明治大学文学部専任准教授。※本記事掲載後の2026年4月、准教授から教授へ博物館学、博物館教育論、学芸員養成を専門とし、学校や地域コミュニティとの連携、博物館人材育成の国際比較など幅広い研究に取り組み、科研費等による教育現場と博物館をつなぐ研究と実践を進めている。慶應義塾大学を卒業後、ロンドン大学ゴールドスミス校で修士号、ロンドン大学教育研究所(IOE-UCL)でPh.D.(教育学)を取得。<好きな水族>:エイ、サンゴ。どちらも家族との思い出がある生き物です。 端山 聡子 1963年神奈川県生まれ。東京国立近代美術館教育普及室長。多摩美術大学卒業。平塚市美術館、横浜美術館を経て現職。長年にわたり美術館教育普及の実践に携わり、市民参加型プログラムの開発、ボランティア育成、中高生プログラム、引きこもり等の生きづらさを抱えた若者のためのプログラムなど多様な活動を展開。<好きな水族>:クラゲ。ふわふわと泳ぐ姿がユニークで、色や形も面白いです。
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2026.03.27
STORY
水槽づくりの舞台裏から見る「水の中の環境をつくる技術」
葛西臨海水族園のリニューアル工事では、生き物たちのいのちを支える水槽飼育設備の設計・施工が進められています。さまざまな自然環境を再現し、生き物たちが快適に暮らせる環境をつくるためには、水質や水温、水流や酸素量など、水槽の形状や生き物に合わせたきめ細やかな調整が必要になります。新しい葛西臨海水族園でその精密な環境づくりを担うのが、新菱冷熱工業株式会社です。今回の「STORY」では、水槽の裏側で“水の循環”によって生き物たちのいのちを守る、技術者たちの仕事と思いをお伝えします。 参考画像:現在の葛西臨海水族園の「大洋の航海者 マグロ」水槽の表側と、水槽用循環ポンプや配管類のある裏側(※他社施工事例) 生き物たちのいのちを支える水の循環をつくる 飼育現場の知見を反映した水槽設備づくり 参考画像:現在の葛西臨海水族園の「サンゴ礁の海」水槽(※他社施工事例)サンゴの飼育には、水流をコントロールすることが必要不可欠です。 来園者に「また来たい」と思ってもらえる水族園に 新水族園の完成に向け、現場では日々作業が進められています。 ※掲載している写真内の水槽や水槽設備は、現在の葛西臨海水族園のものです。新水族園の水槽や水槽設備は、現在製作を進めています。
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2026.03.10
TALK
海と人とがつながる場所
葛西臨海水族園から考える自然との向き合い方
福永真弓さん (写真左) 佐藤哲さん (写真右) 水族館は今、魚の展示施設という側面だけではなく、人と海の関係性を学び、再考する場としても注目されています。気候変動や生態系の変化など、私たちがさまざまな環境課題に直面している中、水族館にも新たな社会的役割が求められているといえます。これからの葛西臨海水族園のあり方について、リニューアルプロジェクトに関わる愛媛大学SDGs推進室 副室長・特命教授の佐藤哲さんと、東京大学大学院で社会的・文化的な側面から環境を研究する環境学博士の福永真弓さんにお話をうかがいました。 調査係時代の写真 南極キングジョージ島にて 海の多様性、人との歴史を学ぶ展示の重要性 気候変動時代の「海と人の新しい関係」を考える 佐藤 哲 1955年生まれ。愛媛大学 SDGs推進室 特命教授 理学博士1985年 上智大学大学院理工学研究科博士課程修了 博士(理学)1989年~1991年、1993年~1997年には、葛西臨海水族園 動物解説員、調査係として勤務。マラウィ大学助教授、WWFジャパン自然保護室長、長野大学教授、総合地球環境学研究所教授などを経て2021年から現職。専門は地域環境学、生態学、持続可能性学。 <好きな水族>:カンパンゴ(ナマズ目ギギ科)アフリカのマラウィ湖に生息する大型のナマズで、産卵後、稚魚が一定の成長を遂げるまで雌雄で保護し、メス親が稚魚の餌となる卵を産んで給餌するという珍しい生態を持っています。水産資源としてもとても重要です。 福永 真弓 1976年生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学系 社会文化環境学専攻環境社会学・環境倫理学研究室 教授 博士2007年 日本学術振興会(特別研究員〈DC2〉)2008年 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻博士課程修了(博士:環境学)立教大学社会学部(助教)、大阪府立大学 21世紀科学研究機構エコサイエンス研究所(准教授)、大阪府立大学現代システム科学域(准教授,新学部への移動)などを経て現職。現場を重視したフィールドワークの実践と厚い記述による分析を通じて、人と自然の関係や環境倫理を問う活動に注力している。<好きな水族>:白鮭(サケ目サケ科サケ属)日本では親しまれている魚であり、人と長く付き合ってきた美しい魚です。残念ながら、最近は日本で獲れなくなっています。
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2026.01.28
PROJECT
- サンゴプロジェクト
「サンゴの苗を作ってみよう」イベントを開催しました
日本産サンゴの飼育展示に取り組んでいる「サンゴ礁の海」水槽 2025年11月30日(日)、葛西臨海水族園にて、新水族園のオープンに向けた「サンゴプロジェクト」のイベント「サンゴの苗を作ってみよう」を開催しました。 「サンゴプロジェクト」は、こどもたちが楽しみながらサンゴとその環境について学び、新水族園オープン時に展示できるようにサンゴを育てていくプロジェクトです。今回はその一環として、新水族園で展示予定のサンゴの苗作りを体験し、現在の水族園でサンゴを展示している水槽を表と裏の両側から見学するプログラムを実施しました。 参加したこどもたちは、サンゴの苗作りや水槽の見学を通して、サンゴがどのような生き物で、どのように育つのかを学び、サンゴがくらす海への関心を深めていました。 ※ 記事内記載の「サンゴ」は、サンゴ礁を形成する「造礁サンゴ」を指します。 サンゴってどんな生き物? 葛西臨海水族園では現在、「サンゴ礁の海」水槽で日本産サンゴの飼育に取り組んでいます。この水槽のサンゴは、2028年にリニューアルオープンする新水族園においても展示を継続する予定です。今回のイベントでは、こどもたちが、新水族園で展示する予定のサンゴの苗を作りました。 苗作りに先立って行われたのは、水族園職員によるプログラムの概要やサンゴの生態についての説明です。 サンゴは木の枝のような形をしていますが、実は植物ではなく動物です。サンゴをよく見ると、イソギンチャクのような姿をした小さな「ポリプ」がたくさん集まっているのがわかります。このポリプには、エサをつかまえる触手や、エサを食べたりフンを出したりする口、食べたものを消化する胃などがあります。 さらに、サンゴの体を顕微鏡で拡大してみると、茶色の小さなツブツブが見えます。これは、「褐虫藻(かっちゅうそう)」という藻類(そうるい)の仲間で、サンゴの体の中でくらしています。褐虫藻は光合成によって栄養を作り出し、サンゴはその栄養をもらい、お互いに支え合って生きています。 会場では、水族園職員が半年ほど前に作ったサンゴの苗を見本として展示 「サンゴって何だろう?」という水族園職員の問いかけに、はじめは「海に生えている木」「植物」と答えていたこどもたちも、その生態を知り「サンゴは動物なんだ!」「ウンチも口から出るの!?」と驚いた様子でした。 サンゴの増え方には、卵を産む方法と、折れた枝が岩にくっついて育つ方法があります。今回のイベントでは、サンゴの採集や輸送の時に折れてしまった小さなサンゴの枝で “苗”を作りました。 サンゴの苗作りに挑戦 サンゴの苗作りは、4~6人ずつのグループに分かれて行いました。小さなサンゴの枝を土台に固定し、1人ひとつずつサンゴの苗を作ります。 はじめに、サンゴを固定するための接着剤の準備からスタートです。ゴム手袋をつけ、粘土のような2種類の特殊な接着剤をよく混ぜ合わせます。その後、サンゴの枝をサンゴ養殖用の土台のへこみにあて、棒状に伸ばした接着剤を根元に巻き付けていきます。接着剤を指でおさえ、形を整えたら完成です。 サンゴにダメージを与えないように作業は丁寧に素早く行い、できあがったサンゴの苗はすぐに水の中へ戻します。こどもたちは、「2種類の接着剤をこねるのがちょっと大変だね」「うまくサンゴがくっついたかな?」などと話しながら、真剣に作業に取り組んでいました。 苗作りを終えたこどもたちは続々と、水族園職員が半年ほど前に作ったサンゴの苗の周りに集まり、「今日作った苗も半年経ったらこれくらい大きくなるかな」「ポリプを見つけたよ」などと、楽しそうに話し合っていました。 サンゴの水槽を裏側から見てみよう サンゴの苗を作った後は、2つのグループに分かれ、サンゴの水槽を表と裏の両側から見学しました。向かったのは、たくさんのサンゴと色とりどりの魚を展示している「グレートバリアリーフ」水槽です。 裏側から見た水槽 水槽でくらす魚たちの食べかすやフンは、細かくばらばらになって水の中に漂い、サンゴにとって大切な栄養になります。水槽を裏側から見ると、照明や水流がしっかりと管理されている様子がよくわかります。照明は褐虫藻による光合成を促し、水流にはエサをサンゴへ流れやすくするなどの役割があります。こどもたちは「サンゴがくらしやすい環境になるように工夫されているんだ」と感心した様子でした。 表側から見た水槽 水槽の表側からは、サンゴの枝の間に隠れる小さな魚の姿も、裏側から見るよりもはっきりと見えます。こどもたちからは「サンゴに隠れて敵から身を守っているんだね」「サンゴはいろんな生き物のおうちになってるね」との声が。サンゴとサンゴ礁にくらす生き物たちの関わりについて、「なるほど!」という表情を浮かべながら学んでいました。 サンゴを守るためにできること たくさんの生き物のいのちを育んでいるサンゴですが、今、世界中でサンゴが減っています。その大きな要因が地球温暖化です。地球温暖化によって海水温が上昇すると、褐虫藻がサンゴから離れてしまい、その結果、サンゴの体が白く見えるようになります。これを「白化現象」といい、白化した状態が続くと、サンゴは褐虫藻から栄養をもらえずにやがて死んでしまいます。 サンゴが減るということは、サンゴとともにくらすたくさんの生き物の住みかが失われることでもあります。サンゴ礁の危機を知ったこどもたちは、「サンゴを守るために何ができるだろう」と話し合い、「ゴミを減らす」「電気をこまめに消す」「食べ物を粗末にしない」など、たくさんの意見があがっていました。 今回のプログラムでは、こどもたちがサンゴの生態や海の環境について学びながら、自分たちの手でサンゴの苗を作りました。サンゴの苗作りや水槽見学を通して、サンゴの役割やサンゴ礁の海への理解も深まったようです。 こどもたちが作ったサンゴの苗は、葛西臨海水族園のバックヤードで飼育係が育て、状態が安定した後に「サンゴ礁の海」水槽で展示する予定です。また、成長後は、新しい水族園でも展示を目指しています。こどもたちからは、自分たちが作ったサンゴの苗がどのように展示されるのか、新水族園の完成を心待ちにする様子もうかがえました。 こどもたちが作ったサンゴの苗 <参加した皆さんの声> ※抜粋・要約 「普段見られない水槽の裏側を見学できて面白かったです。今日作ったサンゴの苗が大きく育ってほしい!どんなふうに展示されるのか楽しみです」(小学校3年生のお子さん) 「サンゴの苗作りはとても楽しかったです。サンゴの水槽で水流などが工夫されているのを知ってびっくりしました」(小学校4年生のお子さん) 「サンゴの白化現象の話を聞いて、無駄な電気を使わないなど、サンゴを増やすためにできることからはじめようと思いました」(小学校4年生のお子さん) 「職員の方の説明がわかりやすく、こどもにも理解しやすかったと思います。サンゴや海の環境について、親子で考える良い機会になりました」(保護者の方) <水族園職員より> 「サンゴの生態や白化現象などの話は少し難しい内容でしたが、お子さんたちはみんな真剣に耳を傾け、しっかりと理解してくれたようでした。サンゴが長い年月をかけて積み重なってできるサンゴ礁は、海でくらす多くの生き物にとって非常に重要な役割を果たしています。今回のプログラムを通して、サンゴがどのような生き物かを知り、日常生活の中でサンゴを守るためにできることを意識してもらえればと願っています」 バックヤードで飼育中のサンゴの苗の様子(2026年1月10日撮影) 今回作ったサンゴの苗は、今後、現水族園の「サンゴ礁の海」水槽へ段階的に移動させ、新水族園での展示継続を目指します。 (「サンゴ礁の海」水槽でサンゴの苗を展示した際はこちらでお知らせします→ 【葛西臨海水族園HP】)/
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2025.12.23
PROJECT
- おさかなプロジェクト
結果発表!「みんなで決めよう!新しい水族園の生き物たち」
葛西臨海水族園は、2028年の新水族園オープンに向けてリニューアルを進めています。このたび、新水族園の「小笠原諸島」をテーマとする水槽で展示する生き物の一部を、皆さまの投票で決定いたしました。 (投票イベントの記事はこちら)投票は、①水族園の来園者の方々と、②水族園の所在地である江戸川区の区立小学校のこどもたちに参加いただき、それぞれで最も投票数の多かった下記の1位の魚2種を、新水族園で展示する予定です。(投票対象になった魚は、現在の葛西臨海水族園では展示していない5種です。) 今回のイベントでは、大変多くの投票やメッセージをいただき、ありがとうございました。今回1位に選ばれた魚以外にも、様々な特徴のある魅力的な生き物たちを展示できるように準備を進めています。新しい葛西臨海水族園の完成を楽しみにお待ちいただけたらうれしいです。 ①水族園の来園者の方々の投票結果 1位 クロハコフグ (589票) (c)Alamy/amanaimages 2位ハタタテダイ240票3位オビテンスモドキ204票4位ワヌケトラギス203票5位シテンチョウチョウウオ178票 ※投票総数 1,414票 寄せられたメッセージの一部 (その魚を選んだ理由/選んだ魚や新水族園への応援メッセージなど) クロハコフグ おもしろいもようや色で、いろいろしりたいからです。 ハタタテダイ 背中のヒレがとがってておもしろいからです。 オビテンスモドキ かっこいいし大きそう。 ワヌケトラギス 細長い魚が好きだから。 シテンチョウチョウウオ 色が派手でかっこいいから。 新水族園 新しい水族館、楽しみにしています!学べる楽しい水族館にしてください。 ②江戸川区立小学校のこどもたちの投票結果 1位 ハタタテダイ (698票) (c)Hiroshi Takeuchi/MarinepressJapan/amanaimages 2位クロハコフグ678票3位シテンチョウチョウウオ518票4位ワヌケトラギス355票5位オビテンスモドキ281票 ※投票総数 2,530票 寄せられたメッセージの一部 (その魚を選んだ理由/選んだ魚や新水族園への応援メッセージなど) ハタタテダイ いろもきれいだし、しましまでかわいいからそれにきめました。 1年生 クロハコフグ 箱みたいな形で面白いから。 2年生 シテンチョウチョウウオ 色がきれいだからです。 3年生 ワヌケトラギス 見ためが可愛く不思議な色をしているから。 5年生 オビテンスモドキ 見た目と名前がかっこいいから。 4年生 新水族園 いつも臨海公園に行く時寄っています。魚だけでなくペンギンなどの動物もいて面白いです!! これからも頑張ってください! 6年生 ※1位以外の魚についても、検討の結果、新水族園で展示することがあります。 投票イベントの記事はこちら
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